こんにちは、フォトグラファーの中西です。
以前、当ホームページ内で「出張撮影(ロケーションフォト)の時に知っておきたい撮影許可や掲載許可の話」という記事を書きましたが、多くの方にお読みいただきありがとうございます。
その後も撮影許可に関する事例を調べていたり、ご意見をいただく中で「商業撮影」と「商用撮影」という用語を混同されているお客様、施設管理者の方が多いように感じています。
言葉の使い方そのものを単に間違われているだけでしたら特段問題はありませんが、言葉の理解の食い違いによってトラブルに発展する事例もいくつか見られたため、今回は「商業撮影」と「商用撮影」の言葉の意味の違い、実際に撮影許可申請を行う際の取り扱い方について解説させていただきます。
よろしければ上の記事をご一読いただいた上で、本記事を読んでいただけるとより理解しやすいかと思います。
商業撮影と商用撮影
商業撮影:カメラマンに対価を支払い、業務として写真撮影を依頼する撮影のこと。
商用撮影:広告・宣伝など撮った写真を使って利益を得る目的のため、写真撮影を行うこと。分かりやすく記載しているところでは「商用利用目的の撮影」と記載している。
大まかに定義づけするとこのようになります。
「商業撮影」というものがいわゆる「有料の撮影行為」全般を指す言葉であるのに対し。「商用撮影」とは「撮った写真を使って利益を得るため撮影を行うこと」と定義することができます。
つまり、撮影時に対価が発生することを「商業撮影」と定めることができるのに対し、撮影した写真を広告や宣伝など利益が発生することに使用する目的で撮影することを「商用撮影」と定めることができます。
したがって厳密に言えば「撮影時に対価が発生しなくとも、撮影後に写真を使って利益を得る行為が行われた場合、その撮影行為は商用撮影だったと言える」ということになります。
この部分が必ずしも「商業撮影」と「商用撮影」が一致しない部分で、少なくない食い違いを生んでいる部分になります。
①その撮影が商業撮影かどうか ⇒ その撮影に対価が発生するかどうか
②その撮影が商用撮影かどうか ⇒ 撮影した写真を使って利益が発生したかどうか
※近年ではインターネット広告の増加やインフルエンサーマーケティングの広がりにつれて、写真や動画を後から商用利用目的に使用するケースも増えています。厳密に言えば、当初は私的利用目的で撮影した写真をインターネット広告として掲載すること、お店のSNSなどに掲載することも広告目的(利益を生む可能性がある)とされることもあります。
よくあるトラブルのケース
①管理者側が商業撮影と商用撮影を同じ意味や混同して使用しているケース
公園や寺社仏閣などの管理者ホームページにある撮影許可申請のページにて、管理者側が商業撮影と商用撮影を同じ意味や混同して使用しているケースがしばしば見られます。
(例としては、「商業撮影の場合は申請書や利用料金が必要」と施設が記載していたものの、確認すると商用利用目的の撮影=商業撮影と混同していたものなど)
用語を理解されている管理者や丁寧に解説してあるページでは、「業としての撮影(広告写真を除く)」と言った記載が多く、広告に使用するような商用撮影は別途要項が定められています。
申請の問い合わせの際には「カメラマンに対して対価を支払うのか」「撮影した写真は私的利用目的か広告などに使う可能性があるのか」を伝え、管理者の指示に従うのが賢明です。
②撮影時には対価が発生しなかったが、後に写真を商用利用することとなったケース
撮影した際にはカメラマンに対し対価が発生せず(モデル撮影やプライベートの撮影など)、無料にて撮影してもらったものを後日、広告・宣伝に利用するケースなどがあります。撮影に関する許可申請と写真の利用に関する許可申請は本来別のものですので、広告に使用する写真を無許可で使用して施設側から指摘を受けるトラブルが発生しています。
写真を商用利用目的に使用する可能性がある際には、撮影前に確認するのがベストですが使用前にも念のため管理者の確認を得るのがトラブル回避につながります。
③撮影した写真が私的利用目的の場合のみ、商業撮影が認められているケース
撮影場所の環境保全や混雑防止、知的財産権の保護などの目的で商業撮影は認められるものの、撮影した写真は私的利用目的のみに限る(中にはSNSなどの掲載も禁止の場合もあり)という撮影地もあります。
あくまで撮影と掲載の許可は別条件ということを理解し、写真を掲載したい場合や商用利用を想定している場合は撮影前に確認しておくことが重要です。
管理者側が商用利用目的の撮影を認めていない場合や使用料を徴収している場合、商用撮影であったことが分かった時点で使用料や罰金の徴収、写真使用の中止・掲載取りやめを求められた事例もあります。
このような無許可の撮影や写真使用、撮影マナーの悪化が続き、撮影禁止や撮影制限の措置が取られる施設も近年増えているため、出張撮影に関わる全ての関係者がしっかりと理解・確認することが重要になっています。
撮影しやすい環境を守るために
今回はなかなか混同しやすい「商業撮影」と「商用撮影」の違いやトラブル回避の方法についてご紹介させていただきました。
インターネットやSNSが発達し、誰もが写真や動画を撮影し発信できるようになった中で出てきたのが「情報の適正な発信問題」です。また、観光地や人気スポットの混雑や撮影マナーを含めた訪問マナーも近年言われるようになりました。
「いちいち撮影許可や掲載許可を取るのは大変、面倒くさい」という声もよく聞きますが、利用者と管理者がコミュニケーションを取り、共通理解のもとで場所を利用するというのは大切なことだと思います。
(個人的には施設に問い合わせることで気持ちよく安心して利用ができますし、例えば「この日はイベントや祭りがあるので混みますよ」とか「午前中はイベントで混むので、午後からなら空いていると思います」などの有益な情報を管理者から教えてもらえることもあります。警備員の方や他の利用者から「許可を取っていますか?」と絡まれても毅然と対応することもできます)
そのような場所の管理者と利用者がともにルールを守り、考えながら将来的に利用しやすい環境を作っていければと考えます。