こんにちは、フォトグラファーの中西です。
秋と言えば、季節の花や紅葉がキレイなことや天候がいいこともあって、七五三やお宮参り、成人式関係、ウェディング関係など外での撮影(ロケーションフォト)が増える時期でもあります。
ロケーションフォトを撮影するにあたって準備はいろいろとあるのですが、一番最初にしなければならないか「その場所で撮影していいのか確認する」ということになります。
今日はそんな撮影許可のお話になります。これから出張撮影を依頼しようかお考えの方など参考にしていただければ幸いです。
*使用した写真は、素材提供サイトの「ぱくたそ」様のものを使用しています(ホームページ)
撮影許可や掲載許可はなぜ必要か?
まず前提として「撮影許可や掲載許可はなぜ必要か?」という点についてご説明します。
写真撮影をされない方や仕事関係で写真を扱わない方には馴染みのほとんどないことだと思いますが、「その場所が撮影できる場所か?公表していい場所か?」というのは撮影において重要なポイントになります。
イベントやお祭り、物品販売などで公園・公共施設・道路などを使う場合は役所や警察署などで申請書を出したことがある方もいらっしゃるかもしれません。
写真撮影関係ではこの事前確認と申請が大切で、かなり頻繁に行う業務の1つになります。
さて、 「撮影許可や掲載許可はなぜ必要か?」 というテーマに戻りますが、一言で言うと「全ての土地・施設に管理者や所有者がいるから」ということになります。
本当の山奥などに行けば、持ち主が分からない土地や所有権が消えているところもあるかもしれませんが、どんなところも基本的に所有者がいて、その場所を管理しているからです。
よって勝手にその場所に立ち入ることは「不法侵入」になったり、何かを壊してしまった場合は「器物破損」になってしまいます。本来所有者が公にすることを望んでいない場合は、勝手にインターネット上などに掲載するとトラブルの原因にもなりかねません。
ですのであらかじめ所有者や管理者(所有者から委託されて別の方が管理していることも多数あります)に「撮影という目的でその場所に入ってよいか」「撮影した写真をインターネットに掲載して良いか」などと確認しておく必要があります。また、記録の形で残す必要がある場合は申請書を提出したり、利用料を求められる場所もあります。
必要な申請のパターン
撮影許可や掲載許可を得るための申請の方法・パターンについては、その場所によってまちまちです。最終的には管理者に問い合わせてその指示に従うようにしてください。
ここではよく見られるパターンについて簡単にご紹介します。
①他の利用者の迷惑にならなければ基本的に申請がいらないケース
観光地などでよく見られるのが基本的に撮影自由の場所です。金沢で言えばひがし茶屋街周辺や長町武家屋敷跡周辺の屋外など、普通に人が行きかう場所です。このような場所は国や自治体が管理する道路や地域が管理する私道であることが多く、本来は自治体や警察への申請が必要なのですが、そこまで大がかりでない場合は申請までは求められないケースです。
ただ、例えば大型の照明機材が必要、通行人を足止めする、大人数での撮影など他の利用者の行動を制限するような場合は申請書や計画書の提出が求められます。
判断が難しい場合は、自分で勝手に判断せずに自治体や警察署に確認するようにしましょう。
②商業撮影は申請が必要なケース(商業撮影はNGなケースも)
こちらも観光地などで多いようですが、商業撮影(対価を受け取って撮影する)は申請が必要なケースがあります。現在は少し運用が変わったようですが、少し前の兼六園などは「商業撮影はNG」パターンでした。
https://note.com/kazuyami77/n/n9da5c2820d0a
カメラマンに対価を支払って撮影を依頼する場合は、管理者に申請を行う必要があります。
ただ、この対応方法ですと友人や家族と偽って撮影するケース、モデル撮影と偽って撮影するケースが多くあるのと、大量の機材やスタッフを持ち込んで他の利用者の迷惑となるケースが見られるため、この申請方法を採用する場所は全国的に減ってきているようです。
③申請書を提出し、審査のうえ許可が下りるケース
一番分かりやすくノーマルな方法が申請書の提出を求められ、それに基づいて許可が下りるケースです。自治体が管理する公園や公共施設で多く取られている方法です。
申請者の連絡先や撮影に使いたい区画・機材・利用人数などの決められた様式に沿って記入し、窓口に提出します。場合によっては利用区画の地図や撮影計画書の提出が必要な場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
審査が行われるため、1~2週間前までに申請書を出す必要があるなど早めに準備する必要があります。人気の施設などは抽選や先着順の場合もあるため、公園や公共施設の利用をお考えの場合は早め早めの申請をおすすめします。
④撮影データの商用利用不可を条件に撮影を認めるケース
そこまで多くないケースですが、撮影データを商用利用しないことを条件に撮影が認められるパターンです。商用利用とはそのデータを広告や商品に使って、対価を受け取ることを言います。
個人のSNSなど商用利用以外であれば掲載をしてもいい場合と、掲載はすべてNGという場合がありますのでトラブルにならないよう管理者に事前にご確認ください。
⑤特定の業者のみ撮影可、利用料などが必要なケース
神社や結婚式場で多いパターンです。
提携している業者(またはその業者が委託しているケースも)のみが撮影を行えるというパターンで、外部のカメラマンは撮影ができないというケースです。神社などでは登録制という仕組みを取っているところもあるようです。
近年では出張撮影の増加に合わせて、持ち込み料やシャッター料などの名目で利用料を支払えば外部カメラマンの撮影も認める場所も増えてきました。
⑥撮影不可の場所
中には撮影をいっさい認めていない場所もあります。
自然保護が目的であったり、過去にトラブルが発生したために撮影を禁止としている場所です。
近年SNSの人気などで撮影禁止となる場所も増えてきてしまっているため、ルールを守って撮影を行っていきたいものです。
申請をする際のチェックポイント
①管理者に早めに問い合わせる
管理者によっては「申請書を○日前までに提出すること」としているところや抽選などの場合もあります。
申請書の必要項目の中には、カメラマンやそのほかの業者(衣装・メイク・ヘアセットなど)と打ち合わせが必要になってくる場合もあるため、できるだけ早めに動き出すことをおすすめします。
場所によっては利用料が必要な場合もあるので、確認しておきます。
②カメラマン・依頼者のどちらが主体で申請するのか相談しておく
カメラマンと依頼者のどちらが申請者(問い合わせ先)になるのかを打ち合わせ段階で決めておきましょう。撮影業者によってはカメラマンが申請をする場合は追加料金がかかるケースもあるので、確認しておきます。
管理者によっては「撮影業者が申請を行うこと」などと定められているところもあります。管理者の指示に従いつつ、撮影業者と連絡を取り合って確実に申請が通るような方法を取るのがいいと思います。
③できるだけ申請前に撮影のイメージを明確にしておく
申請書の必要項目の中には、使用する機材や参加人数、撮影の内容を記入する欄があることもあります。よって申請前にそれらのイメージをできるだけ具体的にしておく必要があります。
場所の使用にあたって審査がある場合などは、申請書の内容と撮影当日の状況があまりに異なるとペナルティを受ける可能性もあるので、撮影のイメージは早めに共有しておきましょう。
④申請のやり取りは記録に残しておく
管理者の中には簡易的に電話連絡だけで場所の使用を認めてくれるところも多くあります。その一方で時々聞くのが「許可を得たはずなのに現地に行ったら、ダメだと言われた」などのトラブルです。管理者から現場の警備員に連絡が行われておらず、撮影を止められるというのもよく聞くトラブルです。
これを防ぐためには、①できるだけメールや文書で記録を残してもらう②文書に残してもらえない場合は、電話の内容(問い合わせ日時・担当者名・担当者の発言内容)を記録しておく―。をしておくと良いです。
申請書のコピーややり取りの内容は撮影現場に持っていくようにします。現場窓口でのすれ違いや撮影中のトラブルに対応するための材料になります。
まとめ
以上のように今回は出張撮影(ロケーションフォト)の際に大事な確認事項・撮影許可や掲載許可のことについてまとめさせていただきました。
今回ご説明したのはわりと多くの事例で通用することではありますが、このほか細かな違いがあったり、ケースバイケースで対応が変わってくる場所ももちろんあります。
まずは早めにご希望の内容を伝えて、どのような申請が必要かや注意点があるかを確認しておくことが大切です。
迷ったらカメラマンにも相談しつつ、イメージどおりの写真が撮れるよう打ち合わせをしていただければと思います。